議員有志による条例案には賛成できません(悲)

こんにちは。池田やすみち(山梨県北杜市議会議員)です。

先日5月31日、北杜市議会有志よる「北杜市太陽光発電設備に関する条例(案)」が発表されました。報道によると6月定例市議会に提出する方針とのことで、市民からのパブコメを募集しています。条例案全文もこちらから入手できます。


また6月6日(火)13:30〜高根農村環境改善センターにて、条例案の説明・意見交換会が予定されています。
ぜひ多くの市民の皆様に関わって頂きながら、実効性のある条例となるよう、発議者ではありませんが(※)、微力ながら働きかけを続けたいと思います。
(※)ともにあゆむ会(原堅志・野中真理子・岡野淳・齋藤功文・栗谷真吾)、明政クラブ(相吉正一・坂本静)、共産党(清水進・志村清)の9議員(敬称略)による提案です。何度でも言わせて頂きたいのですが、本当に素晴らしい動きで尊敬します。

 

新聞報道がされた日に、私の賛成条件をブログに書きました。
翌日には条例案全文も公開されましたが、残念なのですが今の内容では問題解決の方向へ向かっていません。逆方向に向かっている、とすら言えます。
大掛かりな見直しが必要で、例えるならば、インテリアの模様替えが必要というレベルではなく、日本家屋からログハウスへの変更が必要、と言った感じでしょうか。
修正のハードルは高いですが、北杜市を”地上設置型太陽光発電設備の無秩序な設置”から守りたい、という想いは一緒だと思っていますので、最後まで諦めず取り組みます。

内容にダブりがありますが、いくつかの視点で見ていきます。
●設置工事に着手する前の事業が全て対象となっているか?→NO
これから事業認定を受ける事業者が対象となっています。
FIT法によって再生可能エネルギーは高値で買い取られていますが、徐々にその価格は下がってきています。価格が下がる前に認定を受けた事業者で、工事未着手なものが市内に約3500件ほどあると見られています。しかし利幅が小さくなった現在、これから認定申請をする事業者はほとんどないと予想されます。
すなわち、すでに認定は受けているが工事に着手していない事業者を対象にしないと全く意味がないわけです。そういった事業者を対象外とすることは、無秩序な設置を条例でわざわざ後押しすることになりますので、条例化が問題の悪化に繋がるわけです。

国の方で事業認定した事業者を、地方自治体の条例で遡及して規制をかけることはできないのでは?、というご意見を耳にしたのですが、それは正しくありません。
国の方では次のように明確に書いています。
「FIT法に基づく認定と関係法令及び条例の許認可等は異なる観点から行われるものであり、FIT法に基づく認定は他法令における許認可等を担保するものではないため、関係法令及び条例の許認可の手続等の中で、計画の実現が困難になる可能性や、発電設備の設置場所や発電出力などが変更となる可能性があることに留意されたい。」
(事業計画策定ガイドライン6ページより)
事業認定を受けた事業者であっても自治体の条例をクリアできなければ事業ができなわけです。
実際先行して条例を制定している自治体は、設置工事前の事業者を対象としていますので、北杜市で対象としない理由はありません。

●条例案の基準は明確か?→不明瞭で恣意的な運用を許すリスクがあります
これまでの北杜市行政は、規制に前向きとは言えない言動をしてきたと言えます。
だからこそ議員有志から条例案が出されたわけです(繰り返しですが尊敬)。
しかしながら、その中身が曖昧だとこれまでと同じ後ろ向きな運用を是認することとなります。
対象となる事業者の範囲が適切ではないのは前述の通りですが、そこが修正されたとしても、恣意的な運用を防げない条例では、発議した議員の皆さんの想いに逆行した結果を招きます。
誰かや何かを犠牲にすることを規制できない、これまでの流れを変えられません。

●無秩序な乱立を防げるか?→防げません
前述の通り、事業認定を受けた事業者が対象外となっています。これから認定を受けるのはごくごく限られた数でしょう。事業認定をすでに受けた事業者は、条例に従う必要がない、とわざわざしています。
事業認定前であっても、上記の通り基準が曖昧なため、これまでの行政の姿勢が継続されることを条例で認めることになります。

●段階的に改善していけば良く、今回の条例は最初の一歩である、に合理性はあるか?→合理性はないでしょう
これから少しずつ良くしていく、のではなく、”今”すべきで、先送りする理由もメリットもありません。
全てを網羅できていなくても今回の条例が問題解決の方へ向かっていれば、最初の一歩との位置付けとして一定程度理解できなくもないですが、そもそも問題解決の方向へ向いていませんので、その理屈も成り立ちません。
今の条例案だと最初の一歩にはならず、想いは前を向いているにも関わらず、”後ずさる”ことになります。

●国から事業認定を受けた事業者を規制することはできない?→できます
事業計画策定ガイドラインによると、「再生可能エネルギー発電事業の実施において遵守する事項」として「関係法令(条例を含む。)の規定を遵守すること。」とあります。そして、「違反時には改善命令や認定取り消しを行うことが可能」とされています。(ガイドライン1−2ページ)。
北杜市の条例に従わない事業者については、指導・助言・勧告などの適切なステップを経て(ここもステップも今の条例案では曖昧ですので要改善です)、それでも条例に合致しない事業者については、国に対して認定取り消しを求めるべきです。

今晩市民の皆様が企画された条例の勉強会があります。
傍聴させていただき、考えや方針をブラッシュアップしたいと思います。