市長提案の市民一律8万円給付は却下されました

6月18日(木)に特別委員会が開催され、市長が提案していた市民全員に商品券5万円+現金3万円を給付するコロナ対策案が実質却下されました。
議会サイドからは商品券3万円とする減額修正案が提出され、修正することに賛成(市長案に反対)が14名市長案に賛成が4名(共産党2、公明党2)という結果となりました。本会議での採決で最終決定となりますが、このまま進めば、市長案に反対15、賛成3というのが最終結論となりそうです(委員長と議長が入れ替わるため)。

5月26日の全員協議会に始まり、コロナ対策本部会議でも、市長サイドから説明を受けました。昨日の特別委員会が開催されるまでの間も、与野党問わず多くの議員と喧々諤々議論してきました。しかし私は8万円に対する疑問が全く解消されず、8万円から0円に修正するか、“見舞金”という位置づけで1万円程度の現金給付が賛成可能なライン、というのが結論でした。

こうした議論の過程で、3万円に減額修正する案が出てきたわけですが、これからご報告する8万円に対する疑問と同じ内容の疑問を解消できなかったため、修正案発議者として名を連ねることはしませんでした(12名が発議者として署名)。議会過半数の賛同見込みがない中で、0円もしくは1万円の減額修正を出すことも検討したのですが、市長に対するNOの考えは3万円チームと同じであったため、議会の大きな塊で市長にNOを示すことの意味とを比較検討し、採決では3万円減額修正案に賛成することとしました。

解消されなかった疑問の数々…数々…

8万円給付という結論を出すにあたり、市内の現状を把握しているのか、まずこの点を市長に確認しました。

市長は自ら事業者を訪問し、直接声を聞いた、想いを聞いた、と繰り返し主張されてきました。ならば何月何日にどの業種の方から話を聞いたのか?と確認したところ、5月26日以降に聞いて回っていることが明らかになりました。5月26日とは、8万円プランについて議会に初めて説明した日です。それを指摘すると、26日よりも前は市役所に訪問して下さった事業者の話を聞いている、とのこと。ではなぜその資料を出さないのか。
市民からのご相談内容がわかる一覧もありましたが、ほとんどが8万円プランを作成した後と思われる日付でした。

財政面は本当に大丈夫なのかも市長に確認しました。

まず基金残高については一般会計と特別会計を合算して説明されるものの、市債については一般会計のみを説明されるので、特別会計も伺うと、612億円の残とのこと。市民一人当たりの基金の多さを強調されますが、借金の多さも突出しています。これは特別会計も含めていた前・行財政改革大綱からも見てとれます(下記)。

 

市民一人あたり10万円は基金を取り崩しても大丈夫、という根拠についてもはっきりしません。第2波、第3波がきたときに、どのような支援策をどの程度の予算を使って実施することを想定しているのか。残りの基金で大丈夫だと言うならば、そのシミュレーションもできているはず、と思いましたが、そういった想定はされてませんでした。コロナ収束後も経済が回復するまで時間を要すと思われますが、その時はどのような策をどの程度の予算で考えているのか?と言う質問への回答も同様で、想定はありませんでした。これでなぜ大きく基金を取り崩しても大丈夫と言えるのか疑問が解消されませんでした。

また、8万円は基金から出すので、借金ではない、との説明ですが、過去には次のような説明を受けていました。
市債残高ー基金=実質の市債残高
ということは、これまでの説明にもとづくならば、基金を取り崩すのは、実質の市債残高アップで、借金するのと同義です。市長の説明は誠実とは思えません。

8万円給付で何を達成しようとしているのか、も確認しました。

主目的は事業者支援であり、8万円給付は即効性もあり、市内事業者に生き延びてもらうことができる、という説明でした。市民に市内観光をしてもらい、食事をし、宿泊をしてもらい、タクシーを使ってもらうんだ、と。
確かに飲食や小売業へは好影響が予想されます(それでも内閣府による過去の給付効果を見ると、消費増は32%程度です)。
しかし8万円の給付を受けたからといって、どれだけの市民が市内で宿泊するでしょうか?
車社会ですが、8万円の給付を受けたからといって、どれだけの市民がタクシーに乗られるでしょうか?
市長がヒアリングして回った先には、不動産、衣料、造園、福祉、レジャー、美術館、農業、製造業なども書かれていますが、8万円給付によって、こうした業種の皆様がどの程度潤うでしょうか?

市長は”想い”をよくお話しされますが(それも大切ですが)、”想い”だけでは事業者は潤いません。

生活支援も目的と説明されましたが、コロナによって収入が減った方がどの程度いらっしゃるのか?と確認しましたが、そのような調査はしていません。先日も書きましたが、公務員や議員(報酬カットしてますが)、年金生活者や15歳未満などで、市内人口の半数程度です。他の自治体ではできているわけですから、ピンポイントで困っている方へ手厚い支援を継続的に行うのであれば良いのですが(市長へはこれを求めています)、そうでない市民も含めて、しかもその割合が高い状況で一律で給付するのは、あまりに支援策として雑すぎます。

では3万円の商品券に減額すれば疑問は解消されるか?

こうした疑問は、3万円に減額した場合も同じですが、議員各位と議論する中からは、疑問が解消されることはありませんでした。
そこで我が会派としては、8万円部分を0円へ減額補正をし、市長へNOを示して反省を促し、早急に検討し直しを求めるべき、と考えましたが、議会過半数の賛同は得られませんでした。

こうした背景から、我が会派は3万円への減額修正案の提出者にはなりませんでした。採決で賛成した理由は冒頭の通りです。

市長の”強い覚悟”とは何なのか

私の手元メモなので正確な文言は議事録となりますが、市長は冒頭あいさつで次のようなことを言ってました。
“覚悟を持って臨んでいる、議会の賛同を得られなければ、再度市民の声を聞く、強い覚悟だ”、と。
今回の修正内容では、みなし不信任には該当しませんので、議会の解散はできません。そうすると市長職を辞して民意を問う、というのが素直な捉え方とも言えますが、どうなんでしょうか。アドリブではなく、手元原稿を読まれていたと思いますが…

来週木曜日まで議会は続きます。最後まで緊張感を持って臨みます。

池田やすみち(山梨県北杜市議会議員)

■プロフィール■
池田恭務(いけだやすみち)
2016年11月より山梨県北杜市議会議員。
地域政党「あしたの北杜を想う会」所属
1973年5月1日生まれ(46歳)
1997年国際基督教大学(ICU)教養学部社会科学科卒
外資系コンサルティング会社等民間企業を経て、
渡辺喜美みんなの党代表秘書(公設政策秘書)。
会派無所属の会代表、経済環境常任委員会前副委員長、広報編集委員会副委員長。