なぜ獣害対策を実施しても現場では効果を感じられないのか?

こんばんは。池田やすみち(北杜市議会議員)です。
今日は、獣害対策について書いてみます。

地域を歩いていると、かなりの頻度で獣害が大変なことになっている、というお話を聞きます。
ちなみに私が頻繁に聞くのはサルによる被害です。その他の獣害も大変と聞きます。
不動産屋さんによると、現地を見学する際にサルに遭遇すると、ほとんど商談にならないとも聞きました。
農業だけでなく、移住者による人口増にも相当ネガティブな影響が出ていると言えそうです。

被害が大変と言っても、どんなレベルか分かりにくいかと思いますが、
下記の10段階評価の抜粋で言えば、レベル9との声がほとんどです。待った無しの状況です。
(レベル9)民家の屋根や庭先でくつろいだり、電線や道路上を堂々と渡ったりするようになり、軒下のつるしガキや倉庫内の収穫物などまで食害
(レベル10)人を恐れずに戸や窓から民家内にまで侵入し、仏壇の供物や台所の生ゴミまでも食害。時に人に対してかみつくなどの人身被害が発生。

そこで先日林政課に話を聞きに行ったところ、それなりのアクションはしています。→北杜市鳥獣被害防止計画
被害の状況把握、個体数調整・有害駆除、捕獲檻、防除、追い払い、啓発、などなど。

ではなぜ地域の現場では効果を感じることができないのか
 やっていることが間違えているか、順番が間違えているのか、正しいことをしているが実施量が足りないのか…

ということで、専門家の方へお話を伺って来ました。

成功する猿害対策は、次のようなアプローチが有効なようです。
(1)現状把握
・群れの調査(アンケートやヒアリング。場所や時間など具体的に。)
・おおよその分布状況把握とどこで捕獲するか検討。ワナを設置。
・捕獲した個体に発信機装着(テレメトリ or GPS。GPSの方が高いが人件費は大幅に低減されるそう。)
・行動圏調査
・集落に依存している群れの識別(山にいるサルは害なし) ーーーーここまで北杜はできているように見えますーーーー
・効果検証のためにも現時点での被害状況を把握(2016年5月12日毎日新聞が山梨県自治体へアンケート実施したところ、被害額を把握できていない、と。申し出のあった被害を基にしているのと、泣き寝入り・自給的農地・耕作放棄が反映されていないから。北杜市はどうかな?)

(2)作戦の立案
・それぞれの群れにどう対処するか。防除、追い払い、捕獲。(群れが複数ある場合は、隣の群れの状況も重要ポイント。ある群れに対処しても、それまで山で暮らしていた隣の群れの行動圏が広がり、集落依存となる可能性もある。)

(3)作戦の実施
・防除、追い払い、捕獲。個別か組み合わせか。
・こんな事例も。人がサボるためではなく、アクションにつなげるためのICT活用! 

総務省の資料より
 ・ちなみにサルは母系社会なので、メスを捕獲すると群れが分かれて被害が増えるそう。それを防ぐには檻で捕獲しメスは残す、のが効果的とか。

(4)作戦実施後の効果分析
・捕獲頭数≠成果。あくまで農作物の被害が減ったか否か。
(例1)集落依存していない群れを捕獲しても農作物被害は減らない。←そりゃそうだ
(例2)集落依存している群れを捕獲しても、隣接する群れが行動圏を広げると、農作物被害は減らない。←複数の群れを並行して対処する必要あり

(5)作戦の見直し・チューニング
・効果が出ない場合、その要因を分析。再度作戦を練り直す。

(さらに)
・モデル集落を作って、まずは一点突破をする。その後市内全体への普及に努める。

とても合理的な進め方だと思います。

ちなみに伺ったその他の「なるほどなぁ」なご意見群。
・鉄砲で撃つと、オスメスが分からない。メスを撃つと群れが分かれて被害が拡大する可能性も。
・大型の檻は購入に大きな費用が必要。効果が出たとして、移動するにはまた大きな費用が必要。
・檻への警戒感を抱かせないために、捕獲しても撃たない方がいい。放置するのも警戒感を強める。

同じような話が総務省の別資料にもありましたのでご紹介。

 なぜ北杜市の獣害対策では現場で効果を感じられないのか、改めてヒアリングしてみようと思います。もしお詳しい方いらっしゃいましたら、ご教授下さい<(_ _)>